Serendipity 〜セレンディピティ 点をつなぐ力〜

 私たちは本当に人生をコントロールできているだろうか。どれだけ計画を立て、モデルや戦略をつくったとしても、そこには常に予想外という別の要素が絡んでくる。むしろ、予想外は決定的要因として、私たちの人生と未来に大きな違いを生じさせることも多い。

 重大な発見の30〜50%程度は、意図せざる偶然の結果生まれている。最高のチャンスはセレンディピティがもたらすことが多い。

セネカ(古代ローマの文筆家):幸運は、準備と好機が重なった時に生まれる。

セレンディピティの定義

 予想外の事態での積極的な判断がもたらした、思いがけない幸運な結果
 単に身にふりかかる偶然ではなく、実は点と点を見つけ、つないでいくプロセス。
 内に秘めた本当の可能性を解き放つ手段

 変化の激しいこの時代に生まれる新たな問題の多くはあまりに複雑で、未来は予想外に左右される部分が大きくなる。しかし、予想外への備えをして、先入観を排除すれば、(幸運か悪運かにかかわらず)運に振り回されなくなる。

セレンディピティのマインドセット

 この能力は伸ばすことができる。
 変化する能力を養う。受身の姿勢から積極的な姿勢に。
 心構えを持つ。変化をチャンスに。自分はどんな人間になりたいのか。大切なものは何か。
 意味と喜びを見つける。好奇心・情報や出来事に対するオープンな姿勢。
 点と点が無数に存在するセレンディピティ・フィールドを生む。
 プロセスは通常、行動をわずかに変えるところから始まる。重要なのは動き出すこと

セレンディピティの妨げになるバイアス

  1. 予想外の要因の過小評価:実は、頻繁に起きている。
  2. 多数派への同調による自己規制
    確かに常識的な予想を立てる人ほど予測の精度は高いが・・。自然で慣れ親しんだ思考法。
  3. 事後合理化:後知恵の功罪
    予測通りに計画(事業計画など)が成功の要因となることはめったにない。
    にも関わらず、後になって何もないところに理由を見つけたりすること。
  4. 機能的固定化に用心
    あるツールの使用に慣れている人は、別の使用方法に心理的ブロックがかかる。
    ケニアの「Mぺさ」:携帯電話を使ったバンキングサービス

ヘーゲル:ドイツの哲学者
 弁証法
  見解(テーゼ) ∩ 相対する見解(アンチテーゼ)→ 新しい見解(ジンテーゼ)

エウレカ・モメント
「そうか!」という感覚。腑に落ちる感覚。ギャップが埋まる瞬間。
 人はもらうより与えることのほうに幸せを感じる。セレンディピティのチャンスも増える。

著者

クリスチャン・ブッシュ
起業家
ニューヨーク大学(NYU)とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で、パーパス・ドリブン・リーダーシップ、イノベーション、アントレプレナーシップを教える。LSEでイノベーション・アンド・コクリエーション・ラボの共同ディレクターとコースリーダーを務めたのち、NYUではセンター・フォー・グローバル・アフェアーズ(CGA)のグローバル・エコノミー・プログラムのディレクターを務める。LSEにて博士号(Ph.D.)取得。
20カ国以上で活動する若手イノベーターのコミュニティであるサンドボックス・ネットワーク、強い影響力を持つリーダーの集まりであるリーダーズ・オン・パーパスの共同創設者。世界経済フォーラムのエクスパートフォーラムのメンバーであり、ロイヤル・ソサエティ・オブ・アートのフェローも務める。

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