競争優位を実現する ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略

2000年代前半に来日したマーケティングの神様、フィリップ・コトラーが推薦した理論。

ファイブ・ウェイ・ポジショニング

  • 価格サービスアクセス経験価値商品の5つ
  • 3点レベル(業界水準)、4点レベル(差別化)、5点レベル(市場支配)の3レベル

⭐️ 5つのうち1つで5点を、別の1つで4点を、残りの3つで3点を維持する。

 一つでも3点を滑り落ちてはいけない。2つ以上の要素で5点・4点を目指さない。


 

この理論が実践的で良いといえる理由

コモディティ化への対応

コモディティ化とは、商品やサービスにおいてメーカーごとの機能や品質などの差が不明瞭化・均質化すること。

使用可能な経営資源が限られているという現実

→ 経営における ”選択と集中” へのアプローチ

調査結果・アンケート(顧客・経営陣・職員に対する)を受けて

  • 企業は、自分達にとってネガティブな意見を自分達に都合の良いように解釈する傾向がある。
  • 消費者が求めているのは、商品やサービスの価値だけではなく、『価値観』だった。
  • 消費者は、一人の人間として認められたがっていた。
  • 取引の決定的要素は、そのものではなく、やり取りする個人個人の人間的価値観だった。
     人間的価値基準:信頼・敬意・正直さ・高潔さ・礼儀・気取らぬ態度。情報・通信技術の氾濫に対応するため。

ウォルマート成功の秘訣

  • お客様を大切にする。
  • 社員を大切にする。
  • 有名ブランドを毎日安く提供する。

1 ) 価格

企業は安さを誇るが、消費者は公正な価格を評価する。
 人々は、一貫性のある価格を求めている。= 妥当な価格
 「ぎりぎりの底値」を謳うものにはたいてい、うさんくささを感じる。
 自社にできる限りの最善の価格

2 ) サービス

まずは、基本をしっかりやること。5つの要素の中で見返りが最も大きい。

サービスは人がすべて。人と人とのやり取り。個人的な形で感情に左右される。
 → 優れたサービスは、優れた社員から生まれる。企業風土に関するルールを改める。

 顧客は、一人の人間として扱われ、サービスをカスタマイズしてくれることを望んでいる。

 サービスに関して、顧客に、知識や情報を与えることは重要。しっかりしたコマーシャル

 企業は、余分なサービスに注ぎ込んできた金を、社員採用や訓練、評価、報酬に充てるべき。

 企業は、短期的な損失には目をつぶり、長期的な顧客ロイヤリティを構築する。

3 ) アクセス

もはや立地だけを指してはいない
 ① 車社会、② インターネット

消費者が望むときに、望む場所で、面倒なく、企業とやり取りできる。
 買い物客が、思った通りの探し物を見つけること。
 アクセスで市場を支配する新興企業の代表といえば、Amazon。
 心理的なアクセス:心地よさ、コミュニティ感覚、清潔さ、便利な営業時間

アクセスの悪さを武器にすることもあるが、企業規模を拡大するとほぼ失敗する。

求めるもの・光景が、建物の壁の中、パソコンの画面の中にあるか。

オンラインで重要な3要素

  1. 料金を明確に掲示する。
  2. 探し物をさっと見つけられる。実店舗なら、店の構成やレイアウトに該当。
  3. 消費者が困っているときに、頼りになること。

4 ) 経験価値

顧客との親密さがものを言う。

エンターテイメント

良い商品やサービスの代わりにはならない。

 消費者は、スーパーの駐車場でのふれあい動物園など求めていない。
 経験価値を重視する顧客が本当に求めているものを見落としている。
 消費者は企業からの敬意を求めている。
 スターバックスの経験価値=『第3の場所』を作っている。

外的な経験価値

エンターテイメント

内的な経験価値

大切なお客様として扱われていること

従業員の態度・親密さ・気配り、店内表示、BGM、従業員の服装・姿勢
→顧客からのフィードバック、徹底した従業員教育が不可欠
「あか抜けた企業イメージ。」PRに力を入れる。地域密着型。

5 ) 商品

「最高」の品より「そこそこ」の品

それほど高価でない商品を「そこそこよい」と感じたら、最高級品に余分なお金を使わない。

 商品で差別化に成功できるためには

  • 本当に画期的で、どこにもない商品、かつ、消費者に刺激や感動を与えた場合のみ。
  • 商品で市場を支配し、限られた品揃えに基づいている。
  • 商品 vs 価格 価格の話抜きで商品を語ることはできない。

 商品選定の3要素

1 ) 品質、2 ) 品揃えの深さ、3 ) 品揃えの広さ
 「信用できる」→「頼りになる」→「インスピレーションを与える」

ファイブ・ウェイ・ポジショニングの実践

5要素の定義は、時代によって変わってくる。
 準備 1 ) 経営陣 2 ) 顧客調査 3 ) 消費者全体 4 ) 社内調査
 経営陣と顧客の見方にズレがある場合 → 広告・マーケティングに問題あり。

まず、5つの要素を標準レベルに引き上げる活動に力を入れるべき。

店を潰してしまうケース

  1. 経営者が仕事に興味を失う。
  2. 「うちはすごい」と自己満足してしまう。
著者

フレッド・クロフォード
経営コンサルティングとシステムインテグレーションの国際的大企業、キャップ・ジェミニ・アーンスト&ヤング(CGEY)の取締役副社長。世界的に認められた戦略家であり、さまざまな世界企業と仕事をしてきた。現在はCGEYで、消費財、小売店、流通業務の担当責任者を務め、同社のとくに重要な大手クライアントを担当している。業界イベントで引く手あまたの講演者であり、業界紙・誌にもたびたび記事を寄稿している。

ライアン・マシューズ
デトロイトに本拠をかまえる未来学者・著述家。独創的かつ斬新なビジネスソリューションを提供することで知られている。講演者、コンサルタントとして国際的に人気があり、消費財に関する専門知識と理解、人口統計やライフスタイルによる分析、eコマースや情報経済の分野での仕事ぶりを評価されている。キャップ・ジェミニ・アーンスト&ヤング(CGEY)、コカ・コーラ、ユニリーバ、ゼネラルモーターズ、P&Gなど、さまざまな世界企業へのコンサルティング・サービスや助言を行っている。

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