静かな人の戦略書

[外交型] たやすく信頼を勝ち取り、頭の回転も早く、行動も迅速だ。性格も朗らかで、魅力にあふれている。職場でも、ごく自然にリーダーシップを発揮する。

[内向型] 新しい環境で身体が硬くなってしまう。何をするにも優柔不断で、起こるはずもないことを、いつもくよくよ心配している。しかし、「優柔不断」は裏を返せば「思慮深い」ということだし、「心配性」はリスクマネジメントにおいて有用な資質だ。

静かな人の仕事の戦略

情報集めと練習

 内向型の方は、スピーチのための情報集めに余念がなく、何度も練習する。相手の話を聞くのがうまく、社交では役に立つ。

控えめな態度が信頼を生む

 無理せずに自分らしく、穏やかな落ち着いた話し方をすれば良い。はったりをかます必要もなければ業界用語を並べ立てる必要もない。無駄口を叩かないところこそ、安心感をもたらす。

内向型人間の脳の使い方

 第一に、じっくりと考える傾向にあり、自分が言おうとしている言葉の真意を慎重に考えてから口を開く。
 第二に、内向型は長期記憶に頼る傾向がある。内向型の脳は即座に反応するのが得意ではない。

脳の構造的特徴

 内向型の脳は外交型の脳に比べて、前頭葉および視床への血流が増加していることがわかっている。内向型の脳では、記憶や問題解決や計画を司る部位においても血流が増えている

内向型の職場での特徴

  • 一人で仕事をするのも苦にならない。
  • 残業が好き。オフィスが静かで仕事がはかどるため。
  • 人との集まりに出ると、気付かないうちにさっさと姿を消してしまうことも。
  • パーティーより家で本を読んだりくつろいで元気になれる。
  • 記憶力に優れているが思い出すのに時間がかかる。
  • 話すより書く方が明確に表現できる。
  • 人の外見に無頓着で顔をよく覚えていないことが多い。

自分の性質を受け入れる

 何かを始めてやった時、努力しなくてもたやすくできてしまって、人から驚かれたり、褒められたりしたような経験はないだろうか?
 理想の仕事を探すなかで、ほんの少しかじっただけで、自分のやりたいことが見つかる人などほとんどいない。重要なのは、自分がもっとも価値を生み出せる仕事を見つけること。内向型・外向型は関係ない。

内向型が新しい環境でどんな問題に直面するか?

  • 新たな仲間を作るのが難しい。
     内向型は人の外見や顔を覚えるのが苦手だ。
  • 気になるけど訊けない。
  • 不意に発言を求められると、緊張してしまう。

内向型が新しい環境でなじむために必要な3つのこと

  • 不意に発言を求められると、緊張してしまう。
  • 仕事の能力を示すこと → 相手の話をしっかり傾聴する。質問してみる。
  • 明確な成果を出すこと → 対面が苦手ならメッセージアプリを活用する。

    この3つがうまくいけば、問題はほぼ解決したも同然。

静かな人の人間関係術

仕事の戦場で味方を増やす

 「おはようございます。」と声をかけ相手を出し抜く。

他人の感情に振り回されない

 内向型の人たちは、相手の言葉の端々や身ぶりや表情をとらえて、言外の意味を読み取るのが得意なのだ。反面、他人の感情に影響されやすい。

一歩引いて、参戦を遅らせる

 もし、相手が一方的に怒鳴り続けても、無理して反論したり、あわてて説明をしたりする必要はない。相手がついに黙るまで怒鳴らせておけば、こちらは考える時間を稼げると考える。

「自分のせい」にしない

 「他人を非難する。」ことと、「自分で責任を引き受ける」ことの中間をとる。対立姿勢を捨て、両者ともに相手側の意見や考え方を理解するように務めるべき。

電話は難敵にも強い味方にもなる

 内向型は、電話対応が苦手である。電話に出るには、その時考えていたことを中断したり、手を止めたりしなければならない。

対応策

  • 発信者識別アプリを使う。
  • 「どのくらい時間があるかを最初に伝える。
  • 「準備した内容」に沿って話す。
  • 「自分のペース」を意識する。
  • メールやメッセージを併用する。

野心的な内向型

 野心と性格にはなんの関係性もない。どんなタイプの人たちもそれぞれ独自の特徴を持っているのに、内向型は自分の長所を過小評価しがち。

傾聴力がある

 内向型は顧客の真のニーズに注意を払う。長々と話をするよりも、はるかに効果的である。

深い関係を築ける

 内向型は長期的な深い関係を結ぶのが非常に得意だ。顧客のことを徹底的にリサーチし、顧客のニーズに耳を傾け、それに応えることだ。

内向型と外向型は惹かれ合う

 内向型と外向型は、陰と陽、強と弱など二つの性質は異なるが、互いに惹かれ合う。お互い敬意を払い、お互いのメリットを享受する。両方で構成されたチームは非常に効果的。

内向型は粘り強い

 内向型は、簡単にはくじけない。自分の目標に向かって粘り強く取り組むことができる。
 冷静な力を「人前」で生かす。

内向型が社交イベントに参加する際の指針

  • 社交イベントに出かける前に、出席すべき理由を自分のなかで明確にしよう。
  • 事前にイベントの流れや座席の配置を頭に入れておく。
  • 会場に早めに到着して、慣れておく。
  • 「行かない」という選択肢も検討する。

勝敗は始まる前に決している

  • プランを完璧に用意する。
  • 辛くなった時の(トイレなど)隠れ場所を探しておく。鏡の前で笑顔の練習をする。
  • 効果的な自己紹介を考えておく。
  • 帰りのこともちゃんと考えておく。
  • 相手に良い印象を与える服装で行く。

雑談のネタを用意しておく

 最近読んだ本、美味しいレストラン、休暇中に起こった面白いできごとなど。ビジネスパーソンなら、出張先での経験(その土地の気候や食べ物など)、仕事に関する見識、業界の現状など。

緊張は自然な反応と割り切る

 「人前で話すのが好きな人は10%しかいない。
 登壇前は誰でも緊張するが、優れたスピーカーは、しっかり準備してきたから大丈夫、と自分に言い聞かせる。そして、過去の成功体験を思い出す。

パブリックスピーキングの極意

  • 出だしはあせらず、間を取ってから話し始めれば良い。
  • 声量は、通常最大音声の50%程度なら、壇上では少しボリュームを上げて60%くらいにすればいい。
  • 面白い話やジョークにこだわらない方が良い。

 人は一般に、リーダーは外交的でなければならないと考えている。しかし、もの静かで内省的な内向型も、企業のトップとして、リーダーシップの役割を果たすことができる。
 重要なのは、リーダーとしてどのように状況を認識し、自分の強みを最大限に活かすかということだ。
 ビル・ゲイツは次のように語る。賢明な内向型は、「物事を深く考えるためにの時間を惜しまない。」「文献に慎重に目を通す」「期待を超える頑張りで問題を解決する」といった長所を自ら見つけることができるだろう。

著者

ジル・チャン(Jill Chang)
ミネソタ大学大学院修士課程修了、ハーバード大学、清華大学でリーダーシップ・プログラム修了。ハーバード・シード・フォー・ソーシャル・イノベーション、フェロー。アメリカの非営利団体でフィランソロピー・アドバイザーを務める。過去2年間で行ったスピーチは200回以上に及ぶ。15年以上にわたり、アメリカ州政府やメジャーリーグなど、さまざまな業界で活躍してきた。2018年、ガールズ・イン・テック台湾40アンダー40受賞。本書は台湾でベストセラー1位となり、20週にわたりトップ10にランクイン、米ベレットコーラー社が28年の歴史で初めて翻訳刊行する作品となり、第23回Foreword INDIES「ブック・オブ・ザ・イヤー」特別賞に選出されるなど話題となっている。現在は母国の台湾・台北市に拠点を置きながら、内向型のキャリア支援やリーダーシップ開発のため国際的に活躍している。

タイトルとURLをコピーしました